診断群分類検索ソフトウエア「ふくろうくん」

波多野賢二1) 熊澤祐輔2) 松元宏明2) 大江和彦3)
東京大学医学系研究科 疾患生命工学センター1) 富士ゼロックス情報システム(株)ERPSL事業本部2) 東京大学医学部附属病院 企画情報運営部3)

FUKURO-KUN -A Desktop Software for the Prospective Payment by Diagnosis Procedure Combination

Kenji HATANO1) Yusuke KUMAZAWA2) Hiroaki MATSUMOTO2) Kazuhiko OHE3)
Center for Disease Biology and Integrative Medicine, University of Tokyo, Tokyo, Japan1) Fuji Xerox Information System Co. Ltd., Tokyo, Japan2) Hospital Computer Center, The Tokyo University Hospital, Tokyo, Japan3)

Abstract:
"FUKURO-KUN" is a DPC(Diagnosis Procedure Combination) search software for the prospective payment. It is developed by Visual Basic and runs on stand-alone Personal Computers with Microsoft Windows(Japanese) . Free installer package is distributed from public web site of the Disease Code-Master Working Team. From the ICD10 code or the Major Disease Category of the disease, users can easily search DPC and related information such as the regulated payment per day for the DPC with simple graphical user interface of this software.

Keywords: Diagnosis Procedure Combination

1. はじめに
2003年4月より、全国の特定機能病院での診断群分類(DPC Diagnosis Procedure Combination)による入院医療費の包括払い制度がスタートした。この制度では、入院目的・診断名のICD10コード・手術処置・重症度・副傷病などの情報により、診断群分類が決定され、診断群分類ごとにあらかじめ定められた保険点数に従い、患者の1日当たりの入院費が包括的に算定される。診断群分類による包括評価は、厚生労働省保険局刊行の「特定機能病院における入院医療の包括評価の概要」により算定可能であるが、算定基準は複雑で、参照すべき情報は多岐にわたる。 「ふくろうくん」は、ユーザーが簡単な操作で診断群分類を検索し、包括評価による保険点数などを表示できるデスクトップアプリケーションである。

2.動作環境とインストール
本アプリケーションはWindows98/Me/NT4.0/2000/XPのOSが稼動するスタンドアロンPC上で動作する。インストールするハードディスクには10MB程度の空き容量を必要とする。動作に当たってサーバーやネットワークは必要としないため、ユーザーは必要に応じて手許のPCにインストールし利用することができる。 インストーラ付きのパッケージは、標準病名マスター作業班ホームページより無償でダウンロードできる。インストールは、インストーラを実行するだけで自動的に行われる。

3. 使用方法
アプリケーション起動後表示されるメイン画面で、診断名のICD10分類コードまたはMDC(Major Disease Category)を入力して検索操作を行う。MDCに定義されている手術処置・副傷病・重症度などの選択項目が表示される。それらを適宜選択することで、診断群分類表示エリアに自動的に診断群分類が検索され表示される。 MDC毎に定義されている手術処置・副傷病・重症度などの付帯情報は異なるが、本アプリケーションでは、マスター上で定義されている項目のみ選択肢として表示されるため、ユーザーは少ない労力で選択作業を行うことができる。 診断群分類表示エリアには診断群分類の名称・コードに加えて、入院期間に応じた入院1日当たりの保険点数が表示される。検索結果はテキスト形式でエクスポートできるので、検索結果を他のソフトウエアで利用することも可能である。また、次期バージョンでは、患者の入院日数と医療機関別係数より包括評価分の点数を計算する機能を実装予定である。

4. 補助機能
病名検索ソフトウエア「病名くん」1)から本ソフトウエアを連携起動し、病名検索と診断群分類検索をシームレスに行うことができる。「病名くん」をインストールした状態で、本ソフトウエアの「病名くんリンク」メニューを選択すると、連携機能が有効になる。「病名くん」で病名を検索し「診断群分類表示」ボタンを押すと本アプリケーションが自動起動し該当する診断群分類を検索する。 「病名くん」は本アプリケーションと同様に標準病名マスターホームページより無償で入手可能である。

5. おわりに
診断群分類による包括評価の算定は、「特定機能病院における入院医療の包括評価の概要」収載の診断群分類情報のほか、病名のICD10分類コード・手術手技のKコード等を併せて参照する必要があり、何らかの検索補助ツールは必須と言ってよい。本ソフトウエアはスタンドアロンPCに容易にインストールでき、簡便な操作で診断群分類情報を検索することができる。医師・医事系病院職員その他診断群分類による包括評価に関連する業務に関わる人々で、簡便な診断群分類検索ツールを求める人に有用なものである。 なお、診断群分類による包括評価は再評価作業が進行中で、今年度末にも改訂が行われると予想される。制度改定があった場合、本アプリケーションもそれに併せて改訂を予定している。

「ふくろうくん」のインストーラおよび最新情報の入手先:標準病名マスター作業班ホームページhttp://www.dis.h.u-tokyo.ac.jp/byomei/

参考文献: 1. 波多野賢二,熊澤祐輔,松元宏明,大江和彦 病名マスター検索ソフトウエア「病名くん」.医療情報学 22 (Suppl.): 789-790.2002