波多野 賢二1) 大江 和彦2)
東京大学医学系研究科 疾患生命工学センター1) 東京大学医学部附属病院 企画情報運営部2)
Development and Evaluation of XML Web Service for the Japanese Disease Code Master and the Diagnosis Procedure Combination
Kenji HATANO1) Kazuhiko OHE2)
Center for Disease Biology and Integrative Medicine, University of Tokyo, Tokyo, Japan1) Department of Planning, Information and Management, The Tokyo University Hospital, Tokyo, Japan2)
Abstract:
XML Web Service is a new distributed processing system by
standard internet technologies. We recently developed the information
retrieval system of Japanese Standard Disease-Code Master and Diagnosis
Procedure Combination using XML Web Service. With seamless remote method
invocation of XML Web Service, users are able to get the latest master
information from their rich desktop applications or internet web sites,
which refer to this service.
1.はじめに
XML Web サービスは、近年注目されている分散処理環境である。HTTPやXMLなどのインターネット標準技術を使うことにより、透過的な分散処理環境を実現できるという特徴を持つ。従来のCORBA、DCOMなどの分散オブジェクト環境に比べて、特定のプロトコルやプラットフォームに制約されないため、導入に要する手続きが少なくてすみ、今後広く普及が見込まれる技術である。しかし本邦ではゲノム関連の研究情報サービスなどを除き医学情報関連分野のWebサービス実例はまだ少ない。本分野においても、XML Web サービスは有望な情報提供手段となると考えられ、サービスの有用性・実用性に関する検証が急がれている。
2.目的
我々はXML Web サービスの医学情報の配布提供手段としての有用性と実用性について検討するため、実験的なサービスサイトを構築した。XML Web サービスは、インターネット・イントラネットの両方で活用しうる技術であるが、今回はインターネットを通じて公共的な医学情報提供を行うケースを想定し、標準病名マスター情報および特定機能病院向け診断群分類情報検索サービスをインターネットに公開した。
3.方法
サーバー環境(ハードウエア):Dual Pentium III 1.03GHz 1GB RAM
サーバー環境(ソフトウエア):Windows2000 Server、 Microsoft IIS5.0 + .Net Framework1.1、Microsoft SQL Server2000
提供メソッド:
1.病名検索(http://www.dis.h.u-tokyo.ac.jp/webservices/byomeisearch.asmx?wsdl)
病名・修飾語検索、類似病名検索、病名正規化情報検索、病名異字体検索、ICD10コード情報検索など
2.診断群分類検索(http://www.dis.h.u-tokyo.ac.jp/webservices/dpcsearch.asmx?wsdl)
診断群分類情報検索、MDC(Major Disease Category)検索など。
開発はC#言語で行った。各メソッドの仕様は標準病名マスター作業班ホームページから公開し、誰でも利用可能とした。
4.結果
実験用クライアントアプリケーション(図1、2)を用いて、このサービスをインターネットを通じて利用した場合の実用性について検討した。病名検索ソフトウエア「病名くん」互換アプリケーション(図1)では、スタンドアロンで動作する「病名くん」に比較して検索速度や使い勝手に体感的に遜色ないことが確認された。この互換アプリケーションは、サーバーと同様にC#言語で開発したが、最新の開発環境を用いることで容易に開発が行えることも確認された。
5.考察
今回の検討でXML Webサービスは公共的な医学情報の提供手段として、十分実用的であることがわかった。また、サーバーおよびクライアントアプリケーションの開発環境がすでに十分整備されているため、容易に開発が行えるというメリットも確認された。XML Web サービスの今後の発展の方向には大別しては次の2点が考えられる。
1. インターネット上の統合的な情報サービスを目指す方向:Webサービスのディレクトリサービス(UDDI)の構築など。 2. セキュリティや非同期処理など、サービスそのものの機能の充実を目指す方向:いわゆる次世代Webサービス。
1番目のUDDIサービスは欧米ではすでに構築事例がある。本邦ではまだ公開サービスそのものが少ないためメリットに乏しいが、今後サービス数の増加とともに有用性が増すと考えられる。
本XML Web サービスの詳細は、標準病名マスター作業班ホームページ http://www.dis.h.u-tokyo.ac.jp/byomei/ で公開している。
参考文献 波多野賢二,熊澤祐輔,松元宏明,大江和彦 病名マスター検索ソフトウエア「病名くん」.医療情報学 22 (Suppl.): 789-790.2002