大江和彦1) 波多野賢二1) 熊澤祐輔2) 松元宏明2)
東大病院中央医療情報1) 富士ゼロックス情報システム(株)ERPSL事業本部2)
Open Software for registering standard disease term into HIS with the capability of adding modifiers and conversion to ICD-10 code
Kazuhiko Ohe1) Kenji Hatano1) Yusuke Kumazawa2) Hiroaki Matsumoto2)
Hospital Computer Center, The Tokyo University Hospital, Tokyo, Japan1) Fuji Xerox Information System Co. Ltd., Tokyo, Japan2)
Abstract:
The Version 2 of the Standard Disease Master based on ICD-10 was released from MEDIS-DC Japan and it includes standard headings, the Code for electronic exchange, ICD-10 as well as synonyms, compatible terms, acceptable modifiers, and hierarchical information for clinical use. It is a little difficult to develop a registration system of diseases embedded in HIS so that the system could utilize these rich information resource of the master. We developed a software library for practical use to enter disease name and to convert the disease names to ICD10 code as well as the Code doe electronic exchange as Windows Dynamic Linking Modules. Further a sample program for demonstrating the usage of the library was developed in Visual Basic. This library allows the developer to create a user-friendly application software which can search disease name by hierarchical tree or sub-string, add the acceptable modifiers to the selected disease, add the modifiers of location of human body by using hierarchical location tree or body schema, create standard Code for electronic exchange, and convert standard ICD10 code. This software will be released as an Open Software and expected to be developed in Java.
Keywords: Open Software, ICD10, Disease Code, Order Entry System
1. はじめに
2001年6月に第2版がリリースされたICD10準拠標準病名マスターには標準見出し語、情報交換用コード、ICD10コードのほかに、その病名見出し語の同義語、互換用語、使える修飾語、および病名そのものを階層的に表示するための臨床階層情報が提供されている1)2)。このマスターのもつこれらの豊富な情報を利用した病名入力システムを開発すれば、使いやすい病名入力システムが実現できると考えられるが、そのようなソフトウエアを最初から開発するには、マスターの構造を知り尽くしている必要がある。しかし、このマスターのもつ情報を十分に使いこなした病名入力システムの開発を、導入する医療機関が個々に設計し開発するのは容易ではない。仮に個々に設計開発するとしても、リファレンススタンダードのようなソフトウエアがあるほうが望ましい。そこで、筆者らはICD10準拠標準病名マスター第2版にもとづく病名の入力と病名コード(交換用コードおよびICD10コード)の生成を行うソフトウエアをWindows ActiveXコンポーネントライブラリとして開発し、さらにそれを用いた病名入力インタフェイスをサンプルプログラムとして開発した。病名入力システムの開発者は、このライブラリを自分のプログラムから呼び出して使用し、病名検索やコード化、修飾語の選択などの主要な機能をブラックボックスとして扱うことができる。
2. ソフトウエアの基本構成
今回、開発するソフトの基本部分は各病院で病院情報システムに組み込むときに使用できるよう、ライブラリ群として開発しオープンソースとして公表することを目的とする。このライブラリ群は図1のように病名DBアクセス基本ライブラリとその上位レイヤである病名検索ActiveX Controlの2つのレイヤーからなり、ライブラリ利用者であるアプリケーション開発者はこの2つのレイヤーを呼び出して自身のアプリケーションを開発することができる。最下層である病名DBアクセス基本ライブラリは、そのアプリケーションソフトが実装されるコンピュータのローカルディスク上に置かれた病名展開マスターファイル群をアクセスする。この病名展開マスターファイル群は、MEDISからリリースされている病名マスターのファイル群を専用の展開ツールにより変換することにより作成されるもので、展開ツールも本ソフトウエアライブラリと一緒に開発され公表されるものである。
実際のアプリケーションのサンプルを示し、ライブラリの具体的な使い方を示すために、病名入力サンプルアプリケーションを開発した。これはVisual Basicで開発されたスタンドアローン型プログラムであるが、これを参考にアプリケーション開発者はVisualBasicまたはVisual C++などでアプリケーションを開発することができる。
3. 動作環境
動作を確認したOS:Microsoft Windows98, Microsoft Windows NT 4.0 + SP6a, Microsoft Windows 2000 + SP1 でCPU、メモリに関しては、上記OSが快適に動作するマシンであればどのようなスペックでもかまわない。HDDの空きスペースは病名展開マスターを除いて最大でも10MBあれば十分である。ただし、Microsoft Windows Common Controls Version 6.0 + SP4のMSCOMCTL.OCX、およびMicrosoft Windows Tabbed Dialog Controls Version 6.0 + SP5のTABCTL32.OCXが必要である。
4. ライブラリの概要
基本ライブラリとして、初期化、病名ノードリスト取得、病名キーワード検索、類似病名情報検索、良く使う修飾語検索、接続修飾語区分取得、修飾語区分検索、修飾語キーワード検索、修飾語ノードリスト取得、修飾語ジャンプドロップダウン項目取得、病名詳細情報取得、病名交換用コード正規化、修飾語詳細情報取得、修飾語排他チェック、キーワード詳細情報取得、エラーID取得などのアプリケーションインタフェイス(API)が提供されている。またユーティリティーとして病名パス合成、病名パス分解、修飾語ソート、基本修飾語コード取得、ファイルバージョン取得、大文字小文字変換、全角半角変換、全角半角カナ変換、全角半角アルファベット変換、異体字変換、同義表記展開、同義表記比較が提供される。
また、GUI(Graphic User Interface)系のコンポ−ネントライブラリとして、ActiveXコントロールを開発した。これらは表示処理機能だけを持っており、検索は上記の基本ライブラリを使用する。そのため各コントロールへ初期化した基本ライブラリオブジェクトを渡す必要がある。また各コントロールは単独で動作するため、他のActiveXコントロールとの連携を行う必要がある場合、各アプリケーション自身がその処理を担わなければならない。コントロールは、病名ツリー検索ビュー、病名キーワード検索ビュー、病名自由検索ビュー、類似病名検索ビュー、病名パネル、修飾語ツリー検索ビュー、修飾語キーワード検索ビュー、部位修飾語検索ビュー、良く使う修飾語ビュー、基本修飾語パネルがある。
5. サンプルプログラム
図2はサンプルプログラムのスナップショットである。階層ツリーからの検索、キーワードからの検索、選択した病名の類似語や同義語、修飾語などを検索し、ICD10とレセ電算コードおよび情報交換用コードを確定することができる。
6. おわりに
このプログラムライブラリはオープンソースとして年内の公表を目指しており、誰でも非営利・営利を問わず利用できる。また年度内にはjavabeansによる同じ仕様のライブラリも開発・公表を準備している。
参考文献:
1. http://www.h.u-tokyo.ac.jp/byomei/
2. http://www.medis.or.jp/